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VRで斜視が治癒!医療におけるVRデバイスの可能性

ニュース

2016/05/17 07:00 更新

GWの直前、シリコンバレーの中心であるカリフォルニア州サンノゼにおいて、「Silicon Valley Virtual Reality Conference & Expo」(以下,SVVR 2016)というイベントが開催されました。

Silicon Valley Virtual Reality Conference & Expo

http://www.4gamer.net/

Oculus VRの「Rift」がKickstarterにアップされる以前の2011年、いち早くVR情報専門サイト「Road to VR 」をオープンしていたベン・ラング(Ben Lang)氏は、SVVR 2016の2日目に行われた基調講演で、「最初の数年、VR産業はゲームなどのエンターテイメント市場によって牽引されていくだろう」と述べており、VRの最新動向を追っている者からすると十分納得感のある話でしょう。なぜならば、「Rift」など上位のVRHMDを使用するのに必要なハイエンドPCを所有するのが、現時点では主としてゲーマーであるからです。PlaystationVRもしかり。

 

その後、現在のハイエンドPCがミドルからローエンドになるにつれ、より多くの人がVRを体験するようになり、例えば図書館のような公共施設や医療現場、学校などでも取り入れられていくとも述べられています。その段階で、ゲーム以外の領域にもスポットライトが当たることになり、もしかすると、現在の私たちでは予想もつかないVRの活用方法が誕生しているかもしれません。

Silicon Valley Virtual Reality Conference & Expo

http://www.4gamer.net/

そう感じさせるセッションが、イベント3日目に行われました。カンファレンスルームで壇上に立ったジェームス・ブラハ(James Blaha)氏は、30歳くらいの青年で、セッションのタイトルは「Rewiring the Brain: How VR Changed My Life」(脳をまたつなげ合わせる:VRがいかに私の人生を変えたか)。

発想の原点は、映画「アバター」と生物学者の言葉

「斜視」とは、片目が目標を向いたとき、もう一方の視線がそちらに向かず、左右や上下にずれているといった状態を指します。遺伝や筋肉の未発達などが理由に挙がっていますが、原因ははっきりとは分かっておらず、世界の2~3%の人に見られる、割とありふれた症状でもあります。両眼の視差による遠近感の把握や立体視が困難になり、疲労やめまいを覚えたり、脳が情報の混乱を抑制するため、どちらかの視力を自ら低下させるようなことも起きます。

Silicon Valley Virtual Reality Conference & Expo

http://www.4gamer.net/

ブラハ氏の場合は、生まれついての寄り目で、斜視であることは生後数か月の段階で診断されたそうです。治療は、長い場合は1日8時間ほど、片目にパッチを当てて目の筋肉をトレーニングしたり、ディスプレイを覗き込んで(あまり面白くない)テストを延々と続けるといったもので、学校でイジメられるということもあって、非常に辛い幼少期を送ったといいます。 ブラハ氏によれば、これらの治療を受けて斜視を克服できるのは全体の50%に満たず、9歳を迎えた時点で改善されない場合、そこから改善するケースはなく、諦めるしかありません。ブラハ氏も、斜視が改善しないまま治療を終えた1人でした。

遠近感の獲得が難しいため球技などの運動もできず、3D映画を友人と楽しむこともままならないまま成人したブラハ氏に転機が訪れたのは、デジタル3D映像によって世界的にヒットした映画「アバター」が公開された2009年のことでした。

3Dグラフィックスとカメラの問題で、あるシーンで振動のような現象が起き、それを解決することがなかなかできなかったと「アバター」のアーティストがインタビューで語っていたのをテレビで見た彼は、画面に映るそのシーンの不備とその理由を簡単に見破ることができた。

そして漠然と「ひょっとして、立体を感知しにくいというハンデが、3Dグラフィックスの制作においては活用できるのではないか」と考えたといいます。

Silicon Valley Virtual Reality Conference & Expo

http://www.4gamer.net/

そのしばらくあとで、ブラハ氏はインターネットの無料講義で神経生物学者のスーザン・バリー(Susan Barry)博士の話を聞く機会を得ました。博士は「脳は、長期間にわたって柔軟さを維持する。たとえ年齢を重ねていても,調整力を持ち続ける」と語り、これを聞いたブラハ氏は、9歳で諦めた斜視の矯正治療は大人になってからもできるのではないか、それには3Dグラフィックスが利用できるのではないかという思いに至ります。

そして、Oculus VRが開発キット「DK1」をリリースした2013年、そのためのスタジオVivid Visionを設立して大学の専門家やゲームプログラマーを集め、自らをテスト材料にした治療プログラムの開発に取りかかったのです。

9歳までに治らなければそのまま……だったハズなのに

2015年始めに完成した「Vivid Vision」は、左右の眼に異なるイメージを送り、視線の歪みを楽しく矯正することを可能にしたといいます。実際に効果があったかどうかは、ブラハ氏の写真を見れば明らかでしょう。斜視は手術によって治療することもできますが、症状によっては一度の手術でも治らない場合があるといいます。

かくして、「9歳までに治らなければ、一生変わらない」と言われてきた斜視を、彼はなんと27歳にして治してしまったのです。テストを繰り返し、ゲーム内のキューブがついに立体的に見えたとき、ブラハ氏は生まれて初めて、まるでキューブの角が自分に当たるような感覚を味わったといいます。

「Vivid Vision」は、ジェスチャー用のセンサー機器とともに100ドル程度で発売される予定ですが、斜視といってもその程度や症状はさまざまであり、今のところ個人でプレイするのではなく、医師に相談して使用するのが望ましいとブラハ氏は述べています。医師のVRに対する理解も必須だと彼は力説し、セッションを終了しました。

今回の「Vivid Vision」は、VRHMDを利用した治療法を開発したという点で、医学的にも非常に大きな成果だと思われます。

VRの活用方法は様々な分野で模索されていますが、徐々にこういった人類にとって今まで解決困難であった問題をVRが解決していくケースも出てくるのでしょうか?だとすれば、私たちがここ数年で全身に浴びることになるであろうVRの大波は一体どれほど重要・貴重な技術なのでしょうか、という事を改めて考えさせられます。

それでは、また!

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